建築設計事務所のための新しい営業戦略:営業のヒント
この記事では、建築家のための新しい営業のヒントを書いています。
紹介活動やHP・SNS運用、コンペ、営業代行、プラットフォーム利用等の一般的なアプローチはここでは割愛し、
少し違った角度からこれからの建築家のための新しいアプローチはないか考えてみました。
最後まで読んでいただけましたら幸いです。
はじめに
「設計事務所」の枠を超える「体験価値」と「共創プラットフォーム」の創出
現代の顧客は、単に「モノ」としての建物を求めるだけでなく、そこに至る「プロセス」や、建物がもたらす「体験」、そして「共感」できるストーリーを重視する傾向にあります。ここに、他社が思いつかないようなアプローチのヒントが隠されています。
これまでの営業手法に新しい考え方を組み込んでいくことがこれからの設計事務所の成功の鍵になります。
「いいものを作る、いい設計をする」もちろん建築を職能とする上でこれが大前提です。しかし、いいものを作っていれさえすれば自然と人々に知れ渡り、多くの建築物を作ることができ、社会貢献につながるということは、よほど運が良くなければありません。
「良いものをどう伝え、認知してもらい、貴社へ設計をお願いする判断してもらうか」ここのヒントを以下記載していきます。
わずかでも貴社の設計事務所運営のヒントに繋がれば幸いです。
1. 「建築×エンターテイメント」:体験型・没入型営業
1.1:「物理的な建築でない建築をつくる」
概要:
プロジェクションマッピング技術やVR/AR、さらには演劇的な要素、物理的な素材要素を組み合わせ、「体験する建築空間」を創出します。
これは物理的な建築物ではなく、光や音、映像、時には香りや役者によって構成される「建築体験」です。例えば、事務所の空き区画や近隣空き家を活用し、未来の都市空間を体験させたり、あるいは建築家の夢見る空間を一時的に「召喚」します。
営業への展開:
話題性の創出: 圧倒的な体験は口コミやSNSで拡散され、事務所のクリエイティビティと技術力を印象付けます。
有料イベント化: 一種のエンターテイメントとしてチケット販売し、収益化も可能です。
見込み客向け先行体験会: 潜在的な見込み客をお誘いし、特別な体験を提供することで、強い関係性を構築します。
コンセプト提示: 新しい建築コンセプトを言葉や図面だけでなく、「体験」として提示することで、より深く共感を呼びます。
ポイント:
「建てる」前から「体験」を提供するという発想。
建築の可能性をアートやエンターテイメントの領域に拡張。
物理的な制約を超えた表現。
1.2:「設計過程の見せる化」
概要:
複数のデザイナー(所内、あるいは外部の招待デザイナーも可)が、あるテーマ(例:30年後の理想の書斎、地域を活性化する小さな複合施設など)に対し、制限時間内にリアルタイムで設計アイデアを出し合い、スケッチや簡易モデルでプレゼンするライブイベント。オンラインで開催。
観客は投票したり、意見を述べたり、時には「投げ銭」で特定のアイデアを応援することも可能です。
営業への展開:
設計プロセスの可視化を行うことで、普段見えない設計の初期段階を公開し、クリエイティブな思考プロセスを魅力的に伝えます。
また社内の若手デザイナーの才能を発掘し、事務所の多様なデザイン力をアピールできます。
視聴者の意見を取り入れることで、顧客ニーズを直接的に把握し、共感を呼ぶ設計に昇華できます。
ポイント:
設計という知的作業をライブエンターテイメント化する発想。
クラウドソーシング的な要素を取り入れ、多様な意見を設計に反映。
2. 「AI×パーソナライズ」:超個別最適化された提案
2.1「AIと建築家、シンフォニー・アーキテクチャ」
概要:
顧客の潜在的な価値観やライフスタイル、美的感覚をディープラーニングで分析するAIシステムを組み合わせ活用します。
顧客には、簡単な質問への回答、好きな画像や音楽の選択、日常の行動などを提供してもらいます。AIはそれらを解析し、単なる間取りやデザインの提案だけでなく、「その人自身がまだ気づいていない、本当に心地よい空間の要素」や「人生を豊かにする空間体験のシナリオ」を複数提示します。
建築家は、そのAIの分析結果を更に読み解き、顧客との対話を通じて「顧客への個別解」をラフ提案します。
イベントとして建築家が伴走して行うことで、顧客の頭の中に合ったイメージが、ラフな形ですが初めて具体化されます。
営業への展開:
顧客自身も言語化・図示化できなかったものを目に見える提案にすることで、強い感動と信頼を生み出します。
AIが初期の膨大な選択肢を絞り込むことで、イベントという短い時間のなかで建築家はより本質的な創造的作業に集中できます。
顧客には「自分自身を発見する旅」のような設計プロセスを提供します。
ポイント:
AIを単なるツールではなく、顧客の深層心理を読み解く「パートナー」として位置づける。
設計提案を「答え」ではなく、顧客との「対話の出発点」とする考え方。
3. 「社会課題解決×プラットフォーム」:共感を軸としたコミュニティ形成
3.1「地域課題を解決するためのファンドとしての建築家」
概要:
空き家問題、限界集落の活性化、災害からの復興など、特定の地域課題解決に特化した建築プロジェクトを立ち上げ、その資金の一部をクラウドファンディングで集めるプラットフォームを事務所が主導して運営します。支援者は単に資金を提供するだけでなく、プロジェクトの初期段階からアイデアを提供したり、完成後の運営に関わったりすることも可能です。事務所は設計・監理だけでなく、プロジェクト全体のプロデュースやコミュニティマネジメントも担います。
営業への展開:
利益追求だけでなく、社会課題解決に真摯に取り組む姿勢が、共感を呼び、事務所のブランド価値を高めます。
また従来型の融資や自己資金だけでなく、多様な資金調達が可能になります。
課題解決型プロジェクトは共感した人々が、単なる施主や下請けではなく、共に創り上げる「仲間」となります。
メディア露出とPR効果:
社会性の高い取り組みはメディアに取り上げられやすく、広報効果も期待できます。
ポイント:
設計事務所が自ら「課題解決プラットフォーム」となり、能動的にプロジェクトを生み出す。
クラウドファンディングを資金調達だけでなく、ファン獲得やコミュニティ形成の手段として活用。
4. 「脱・固定概念」:流動的・実験的な営業拠点
4.1「オフィスから出よう」
概要:
固定されたオフィスに縛られず、期間限定で様々な場所に「ポップアップ設計スタジオ」を開設します。それは、空き店舗、公園の一角、大学のキャンパス、商業施設、あるいは移動式のキャンピングカーかもしれません。各拠点では、その場所の特性や集まる人々に合わせたテーマのミニ展示、ワークショップ、無料相談会などを実施します。
営業への展開:
普段設計事務所に足を運ばない層との接点を劇的に増やします。各地域に深く入り込むことで、リアルなニーズや課題を発見できます。
実験的な試みの場:
新しい設計コンセプトやサービスを、小規模かつ低リスクで試すことができます。
PR効果と話題性:
「あの設計事務所、今度はこんなところで面白いことやってる!」と話題になりやすいです。
ポイント:
事務所の「場所」という概念を流動化させ、営業エリアをダイナミックに拡張。
「待ち」の営業ではなく、積極的に「出会い」を創出するフットワークの軽さ。
新しい手法を成功に導くための視点
事務所の理念との整合性:
どんなに斬新でも、事務所の持つ設計思想や価値観と乖離していては意味がありません。長期的な視点でどういう建築家でありたいのかここがすべての出発点になります。
ターゲット顧客への適合性:
誰に届けたいのかを明確にし、そのターゲットに響く手法を選びます。
実行可能性とリソース:
アイデアを実現するための具体的なステップと必要なリソース(人材、資金、技術)を考慮します。最初は小さく始めて検証が重要です。
継続性と発展性:
一過性のもので終わらせず、継続的に実施し、さらに発展させていく視点がもてるかもポイントです。
これらのアイデアはあくまで「種」です。これを元に、貴事務所ならではの強みや個性を掛け合わせることで、本当に「目から鱗」で「他人が思いつかない」独自の営業手法が生み出せるはずです。営業に大切なことは、常識にとらわれず、顧客に新しい価値と驚きを提供しようとする探求心です。
営業にお困りの事務所様はお気軽に弊社へご相談ください。