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2025年5月住宅着工棟数、34.4%減の衝撃:駆け込み反動だけでは済まない市場の構造変化を徹底分析【前編】

2025.07.10

 



 

序論:住宅市場を襲った統計の衝撃


 

2025年6月末、国土交通省が公表した5月の建築着工統計は、住宅市場関係者に衝撃を与えました。新設住宅着工戸数はわずか43,237戸、前年同月と比較して実に34.4%もの減少を記録 。これは4月の前年同月比26.6%減に続く2ヶ月連続のマイナスであり、下げ幅はさらに拡大し着地しました。

この数字について、多くのメディアは一つのシンプルな説明を提示しています。2025年4月1日に施行された改正建築物省エネ法に伴う「省エネ基準適合義務化」を前に、3月に発生した「駆け込み需要」の反動減である、という見方です 。確かに、3月の着工戸数は前年同月比で約39%という驚異的な増加を見せており 7、その反動が4月と5月に現れたことは間違いありません。

しかし、この歴史的な落ち込みを単なる「反動減」の一言で片付けてしまうのは、市場が発している重要なシグナルを見過ごすことになります。今回の減少幅の大きさは、駆け込み需要という特殊要因の裏に隠れていた、より深刻で構造的な問題を浮き彫りにしています。本レポートでは、この34.4%減という数字を多角的に分解し、その背景にある「金利上昇」「建築コスト高騰」「需要の二極化」という3つの構造的圧力、そしてそれに対応する政府の強力な政策誘導を分析します。日本の住宅市場が今、どのような転換点に立たされているのか、そしてこれからどこへ向かおうとしているのかを、データに基づいて記載していきます。


 

第1章:ファクトレビュー:2025年5月住宅着工データの分解


分析の土台として、まずは国土交通省が発表した2025年5月の統計データを詳細に確認しました。数字の羅列に見えるかもしれないが、ここには市場の体温を示す重要な情報が凝縮されています。


 

全体像:戸数と床面積の同時減少


 

まず、主要な指標を見てみよう。

  • 新設住宅着工戸数: 43,237戸(前年同月比34.4%減)。
  • 新設住宅着工床面積: 3,333千平方メートル(前年同月比35.9%減)。
  • 季節調整済年率換算値: 529千戸(前月比15.6%減)。

注目すべきは、戸数だけでなく床面積も同等、あるいはそれ以上に減少している点だ。これは単に建てる家の数が減っただけでなく、一戸当たりの規模も縮小している可能性を示唆しており、コスト高騰に対する市場の苦悩が垣間見えます。また、季節調整済年率換算値が前月から15.6%も減少していることは、3月の駆け込み需要で得た勢いが完全に失われ、市場が急激に冷え込んでいることを示しています。


 

利用関係別:すべてのセグメントで深刻な落ち込み


 

次に、住宅の利用関係別に内訳を見ていくと、今回の不振が特定のセグメントに限った話ではないことがわかります。

  • 持家: 11,920戸(前年同月比30.9%減)。個人の住宅取得マインドを最も直接的に反映するこのカテゴリーが3割以上も減少したことは、消費者の購買意欲が著しく低下していることを物語ります。
  • 貸家: 18,893戸(前年同月比30.5%減)。主に投資目的で建設される貸家も同様に3割減となっており、不動産投資家の間でも先行きに対する警戒感が強まっていることがうかがえます。
  • 分譲住宅: 11,924戸(前年同月比43.8%減)。3つのカテゴリーの中で最も減少幅が大きく、特に深刻な状況にあります。これは、デベロッパーが主導する市場が大きな打撃を受けていることを示しています。


 

分譲住宅の深掘り:マンション市場の崩壊的状況


 

最も落ち込みが激しい分譲住宅をさらに細分化すると、都市部の住宅市場における重大な変化が浮かび上がります。

  • マンション: 4,778戸(前年同月比56.5%減)。半数以下という壊滅的な減少率であり、特に都市部のマンション市場が深刻な供給縮小に見舞われています。
  • 一戸建住宅: 7,083戸(前年同月比29.9%減)。マンションほどではないものの、こちらも約3割の減少であり、郊外を含めた分譲戸建て市場も決して楽観はできません。


 

地域別分析:全国に広がる不振


 

この不振は、特定の地域に限定されたものではありません。三大都市圏を含むすべての地域で大幅なマイナスを記録しており、問題が全国規模であることがわかります。

  • 首都圏: 全体で31.5%減。特にマンションは66.6%減と、壊滅的な状況です。
  • 中部圏: 全体で22.3%減。こちらもマンションは74.6%減と、極めて深刻な落ち込みを見せています。
  • 近畿圏: 全体で36.0%減。この地域では貸家が51.2%減と、投資マインドの冷え込みが際立っています。
  • その他地域: 全体で40.5%減。三大都市圏以外でも4割を超える減少となっており、地方経済への影響も懸念されます。

これらのデータを一覧で確認するために、以下の表にまとめる。

 

表1:2025年5月 新設住宅着工戸数 主要指標

 

指標分類着工戸数(戸)前年同月比
総戸数43,237-34.4%
持家11,920-30.9%
貸家18,893-30.5%
分譲住宅11,924-43.8%
うちマンション4,778-56.5%
うち一戸建住宅7,083-29.9%


 

出典:国土交通省「建築着工統計調査」(2025年5月分)

 


 

この表が示すのは、住宅市場のあらゆる側面が同時に、かつ深刻なレベルで収縮しているという紛れもない事実である。

この数字の背景に何があるのか、次回【後編】で掘り下げていきます。


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