新築住宅のための土地探し完全ガイド:久留米市編(前編)
目次
前編
はじめに
新築住宅における土地選びの重要性と本レポートの活用法
第1章:新築住宅のための土地探しの始め方と流れ
1.1. 土地探しの準備:希望条件の明確化と情報収集
1.2. 土地探しの主な方法とそれぞれの特徴
1.3. 現地見学で確認すべきこと
1.4. 土地探しから購入までの期間と大まかな流れ
第2章:土地選びの重要チェックポイント:法的規制と安全性
2.1. 法規制の確認:理想の家を建てるために
2.2. 土地の安全性と物理的条件の確認
はじめに
新築住宅における土地選びの重要性と本レポートの活用法
新しい家を建てる計画の中で、土地選びはとても大切な最初のステップです。土地はただ家を建てる場所というだけでなく、これから家族がどんな毎日を送るか、どれだけ快適に暮らせるか、そして将来的にその土地の価値がどうなるかにも大きく関わってきます。夢のマイホームを実現するためには、家のデザインや設備だけでなく、土地そのものが持つ特徴や周りの環境、法律で決められた条件などを、いろいろな角度からじっくり考えて、慎重に選ぶことが何よりも大切です。
良い土地を選ぶことができれば、気持ちよく安全に暮らせる場所、毎日の生活の便利さ、子育てしやすい環境、そして家族みんなの幸せにつながります。反対に、土地選びで後悔してしまうと、せっかくの新築計画全体が残念なものになりかねません。
このレポートは、福岡県久留米市で新築の家を建てるために土地を探し始める皆さんに向けて、その複雑な道のりを分かりやすく、そして実際に役立つように案内することを目指しています。一般的な土地探しの知識はもちろん、久留米市ならではの地域情報や法律、市からのサポート制度なども盛り込み、専門家の目線から詳しい情報とアドバイスをお届けします。土地探しの準備から、情報を集め、実際に土地を見に行き、法律で決められたことを確認し、お金の計画を立て、そして契約するまで、一つ一つのステップを丁寧に解説し、皆さんが自信を持って、後悔のない土地選びができるように応援します。
第1章:新築住宅のための土地探しの始め方と流れ
1.1. 土地探しの準備:希望条件の明確化と情報収集
土地探しをスタートする前に、まずは家族みんなでじっくり話し合いましょう。どんな暮らしがしたいのか、新しい家と土地に何を一番求めているのか、具体的なイメージを共有することが大切です。
①希望条件をはっきりさせる:
家族の人数(今いる人数、将来増えたり減ったりする可能性)、毎日の過ごし方(趣味、家で過ごす時間の長さ、お客さんが来る頻度など)、将来の計画(子どもの成長、親との同居の可能性など)を考えながら、住みたいエリア、土地の広さ、大体の予算を決めます。さらに、周りの環境についても、会社や学校への通いやすさ(駅やバス停からの距離、かかる時間)、毎日のお買い物場所(スーパー、コンビニ)、病院、公園があるか、子育てしやすい環境か(学校の区域、保育園、治安の良さ)など、何を一番大切にしたいか、優先順位をはっきりさせることが大事です。
すべての希望を100%満たす土地を見つけるのは、なかなか難しいものです 。だから、希望する条件を書き出すときには、「これだけは絶対に譲れない!」「できればこうあってほしい」「これは我慢できるかな」というように、優先順位をしっかり決めておくことが、効率よく土地を探すための重要なポイントです。例えば、「駅からの徒歩時間は15分以内」は譲れないけれど、「土地の形は少し変わっていても大丈夫」といった具体的な判断基準を持っておくと、選択肢が多すぎて迷ってしまったり、逆に少なすぎて見つからなかったりするのを防げます。特に久留米市のように、場所によって色々な特徴がある街で土地を探すなら、この優先順位付けは欠かせません。こうすることで、不動産屋さんとの話もスムーズに進み、より希望に近い物件を紹介してもらいやすくなるでしょう。
②最初のお金の計画と住宅ローンの事前チェック:
土地の値段だけでなく、後で説明する色々な費用や家を建てるためのお金も全部含めて、総額でどれくらい必要か、大まかに把握しておくことが大切です。自分で用意できるお金はいくらか、住宅ローンはどれくらい借りられそうか、最初の段階でお金の計画をざっくりと立てておきましょう。できれば、土地探しを始めたばかりの頃に、銀行などの金融機関に住宅ローンの事前審査を申し込んでおくことをおすすめします。事前審査のかけ方がわからない方はお気軽に弊社へお問い合わせください。事前審査で借りられる金額の目安が分かれば、より現実的な予算で土地探しを進めることができます。
③久留米市のことを知っておく:
久留米市がどんな場所か(筑後川が流れていること、街がどれくらい広がっているか、郊外にはどんな自然があるかなど)、主なエリア(西鉄久留米駅の周り、JR久留米駅の周り、上津エリア、国分エリアなど 4)、交通手段(電車、バス、大きな道路)、そしてこれから街がどうなっていくのか、といったことを事前に調べておくと、どのエリアにするか選ぶときの参考になります。市のホームページや地域の情報誌、不動産のウェブサイトなどが役立ちます。
1.2. 土地探しの主な方法とそれぞれの特徴
希望する条件がある程度決まったら、いよいよ実際に土地の情報を集め始めます。土地を探す方法はたくさんありますが、それぞれのやり方の良い点と少し注意が必要な点を理解して、いくつかの方法を組み合わせて使うのが効果的です。
①インターネットの不動産サイトを使う:
SUUMO(スーモ)、HOME'S(ホームズ)、at home(アットホーム)といった全国的に有名な大きな不動産サイトは、情報がたくさんあって手軽に探せるのが良いところです。また、福岡県宅地建物取引業協会が運営している「ふれんず」のような、地域に特化したサイトでは、より地元に密着した情報が見つかるかもしれません。
より詳しい町名で絞り込んだり、値段の範囲、土地の広さ、最寄りの駅から歩いてかかる時間、家を建てる会社が決まっているかどうか(「建築条件なし」など)、都市ガスや上下水道といった設備があるかどうかで検索したりすることができます。
インターネットのサイトの少し残念な点は、情報がいつも最新とは限らないことや、まだ市場に出ていない「未公開物件」の情報は手に入らないことです。
②不動産屋さんに相談する:
不動産屋さんに相談する一番のメリットは、インターネットでは見つからない、まだ公開されていない物件の情報をもらえる可能性があることです。また、希望する条件を伝えれば、専門家の目で物件を探してくれたり、値段の交渉や契約の手続きを手伝ってくれたりするのも魅力です。
不動産屋さんには、全国にお店がある大きな会社と、特定の地域に強い地元の会社があります。どちらが良いとは一概には言えませんが、久留米市内の情報に詳しいか、これまでの実績はどうか、担当してくれる人との相性は良いかなどを考えて選びましょう。インターネットの口コミ情報も参考になりますが、書かれていることが本当に正しいか、新しい情報かには注意が必要です。最終的には、実際にいくつかの不動産屋さんと話してみて、信頼できるパートナーを見つけることが大切です。
不動産屋さんは、「レインズ(REINS)」という、不動産業者だけが見られる情報システムにアクセスできるので、よりたくさんの物件情報の中から探すことができます。
③ハウスメーカーや工務店に頼む:
家を建てるハウスメーカーや工務店がもう決まっている場合や、検討している会社がある場合は、その会社を通して土地を探す方法もあります。家のプランと土地探しを一緒に進められるので、その土地に希望の家が建てられるか、全部でどれくらいのお金がかかるかなどを具体的に把握しやすいのが良い点です。提携している不動産屋さんから情報をもらったり、会社が持っている「建築条件付き土地」を紹介されたりすることがあります。
「建築条件付き土地」 というのは、土地を買う契約と家を建てる契約がセットになっているものです。土地と建物の窓口が一つになるので、手続きがスムーズに進みやすいというメリットがあります。一方で、家を建てる会社が決まっているので、家のデザインの自由度や建築費用を他と比べにくいという面もあります。自分の希望(自由にデザインしたいか、手続きを簡単に済ませたいかなど)と照らし合わせて、良い点と少し注意が必要な点をじっくり比較検討する必要があります。契約する前には、提案される家のプランの内容、費用、契約をやめる場合の条件などを十分に確認することがとても大切です。
④市役所などの土地の販売や競売:
市役所などが持っている土地(市有地など)が売りに出されたり、競売にかけられたりすることがあります。久留米市でも、過去に市が持っている土地を一般競争入札で売ったことがあり、入札の結果や申し込みがなかった物件を先着順で売る情報などが市のホームページで公開されています。これらの物件は、値段がはっきりしていたり、市場の値段より安かったりする場合があるというメリットが期待できますが、手続きが面倒だったり、物件の数が少なかったりするデメリットもあります。
また、裁判所が差し押さえた不動産を売る不動産競売も土地を手に入れる一つの方法です。不動産競売物件情報サイトなどで情報を得ることができますが、権利関係が複雑な場合もあるため、専門的な知識が必要になることが多いです。福岡県庁のホームページでも公売情報が載ることがあります。
⑤建築家と一緒に探す:
家の設計の専門家である建築家と、土地探しの段階から一緒に進める方法も効果的です。建築家は、その土地の形、法律で決められたこと、周りの環境などを読み解き、住む人の希望を最大限に活かしたプランを提案してくれます。一見すると使いにくそうな変わった形の土地や斜面のある土地、あるいは厳しい法律の制約がある土地でも、建築家のアイデアと設計力によって魅力的な住まいに生まれ変わる可能性があります。また、建築家は法律で決められたことのチェックや、土地と建物を合わせた全体のお金のアドバイスもしてくれるので、安心して土地選びを進められます。
これらの色々な情報源を一つだけ使うのではなく、いくつか組み合わせて活用することが、より良い土地との出会いのチャンスを増やす賢いやり方と言えます。例えば、インターネットのサイトで大体の値段を調べ、地元の不動産屋さんに具体的な希望を伝えてまだ公開されていない情報を探しつつ、気になる土地が見つかったら建築家に一緒に行ってもらって専門的なアドバイスをもらう、といった多角的なアプローチが理想的です。こうすることで、個人では手に入れにくい情報や専門知識を得て、情報の偏りをなくし、より有利な条件で土地を手に入れられる可能性が高まります。
1.3. 現地見学で確認すべきこと
気になる土地が見つかったら、必ず現地に行って自分の目で確かめることが絶対に必要です。図面や写真だけでは分からないたくさんの情報が、現地にはあります。
①五感で感じること:
騒音(車の音、電車の音、近くの工場の音など)、気になる臭い(飲食店の臭い、工場の臭い、家畜の臭いなど)、日当たりの具合(時間帯によってどう変わるか、冬の日差しはどうか)、風通し、景色などを実際に体で感じてみましょう。
②近所の様子:
隣の家や建物の様子、住んでいる人の雰囲気(できれば挨拶してみる)、あまり好ましくない施設(騒音や臭いを出す可能性のある工場、お墓、高い電圧の送電線、風俗店など)がないか確認します。
③交通の便:
最寄りの駅やバス停までの実際の距離、道のりの様子(坂道があるか、歩道があるか、街灯があるかなど)、かかる時間を自分の足で歩いて確かめます。
④生活に必要な施設:
スーパー、コンビニ、病院、銀行、郵便局、学校、保育園、公園など、毎日の生活に必要な施設への行きやすさや距離感を確認します。
⑤土地の状態:
土地の正確な形、間口(道路に面している部分の長さ)、奥行き、高さの違い(道路や隣の土地との段差)、擁壁(ようへき:土砂崩れを防ぐ壁)があるかどうかとその状態(ひび割れ、膨らみ、傾き、水抜き穴が詰まっていないかなど)を注意深く見ます。
⑥境界の確認:
隣の土地との境目がはっきりしているか(境界を示す杭などがあるか)を確認します。はっきりしない場合は、後でトラブルの原因になることがあるので、売主さんに確認したり、測量を考えたりする必要があります。
⑦水道・ガス・電気などの状況:
上下水道(公営水道か井戸か、公共下水か浄化槽か)、ガス(都市ガスかプロパンガスか)、電気が引き込まれているかを確認します。家の前の道路に配管が来ているか、敷地の中に引き込む工事が別に必要か、費用はどれくらいかかるかなどを不動産屋さんや関係する業者に確認します。
現地見学は、一度だけでなく、時間帯(朝・昼・夜)や曜日(平日・休日)、天気(晴れの日・雨の日)を変えて何回か行うのが理想的です。こうすることで、特定の条件の時しか分からない土地の様子や問題点を見つけられることがあります。
図面やデータだけでは分からない土地の「雰囲気」や「暮らしやすさ」を掴むためには、五感をフルに使った「体験型」の現地調査がおすすめです。例えば、朝の日差しはどうか、昼間の騒音はどれくらいか、夜道の明るさや人通りはどうか、雨の日の水はけはどうか、といった点を実際に自分の身で体験することで、住み始めた後の「こんなはずじゃなかった」という後悔を効果的に防ぐことができます。
1.4. 土地探しから購入までの期間と大まかな流れ
土地探しを始めてから実際に購入し、引き渡しを受けるまでには、だいたい3ヶ月から1年くらいの期間を見ておくと良いでしょう 2。ただし、これはあくまで目安で、希望する条件や市場の状況によって大きく変わります。
以下に、土地を買うときの一般的なステップと、それぞれのステップにかかる期間の目安を示します。
ステップ | 主な内容 | 目安期間 |
1. 情報集め・土地探し | 希望条件の整理、相場の確認、不動産サイトの閲覧、不動産屋さん・ハウスメーカーへの相談 | 3ヶ月~1年 |
2. 現地見学 | 候補地の周りの環境、土地の状況、水道・ガス・電気などの確認 | (上記期間に含む) |
3. 買付申込み・住宅ローン事前審査 | 購入の意思表示(買付証明書の提出)、値段の交渉、諸費用の確認、住宅ローン事前審査の申込み | 約2週間 |
4. 売買契約・手付金の支払い | 大切なことの説明、売買契約書への署名・押印、手付金(物件価格の5~10%くらい)の支払い | 約2週間 |
5. 住宅ローン本審査 | 売買契約の後、金融機関へ住宅ローン本審査の申込み | (契約後すぐに) |
6. 残りのお金の支払い・所有権の移転登記 | ローン契約(金消契約)、ローンの実行、残りのお金の支払い、固定資産税などの精算、所有権移転登記・抵当権設定登記(司法書士に依頼) | 1~2ヶ月 |
7. 注文住宅の設計・建築開始 | 土地の引き渡し後、家の設計・建築の準備開始(地盤調査、必要なら地盤改良) | (土地の支払い後) |
特に気をつけてほしいのは、買付証明書を出してから売買契約を結ぶまでの期間が1~2週間くらいと比較的短いことです。
この間に契約条件の確認や手付金の準備などが必要になるので、住宅ローンの事前審査を早めに済ませておくなど、事前の準備がとても大切になります。
ここに示した期間はあくまで一般的な目安で、実際には色々な理由で変わることがあると理解しておく必要があります。例えば、とても珍しい条件の土地を探している場合は土地探し自体が長くなるかもしれませんし、人気のあるエリアで競争率が高い場合は、良い土地が出るとすぐに買い手がついてしまうため、素早い判断と行動が求められます。また、住宅ローンの審査の状況や、売る人・買う人それぞれの個人的な事情なども期間に影響します。
ですから、ある程度余裕を持ったスケジュールを立てるとともに、良いチャンスを逃さないための準備(お金の計画を具体的にする、家族の中でどうするか決めておくなど)を整えておくことが、スムーズに土地を手に入れるための鍵となります。
第2章:土地選びの重要チェックポイント:法的規制と安全性
土地を選ぶとき、希望通りの家が建てられるか、そして安全に暮らせるかどうかを確認することは、ものすごく大切です。この章では、土地に関わる法律で決められたこと(法的規制)と、土地そのものの安全性や物理的な条件について、久留米市の情報を交えながら詳しくご説明します。
2.1. 法規制の確認:理想の家を建てるために
土地には色々な法律による決まりごとがあり、これらを確認しないで買ってしまうと、思っていたような家が建てられなかったり、最悪の場合、家を建てること自体ができなかったりする可能性があります。
①都市計画法・建築基準法・都道府県建築安全条例ってなに?:
家づくりに関わる一番基本的な法律として、「都市計画法」と「建築基準法」があります。都市計画法は、街が健全に発展して、きれいに整備されるようにするための法律で、土地の使い道や道路・公園などの街の施設の計画を決めています。建築基準法は、建物の敷地、構造、設備、使い道に関する最低限のルールを決めた法律で、みんなの命や健康、財産を守ることを目的としています。これらに加えて、それぞれの都道府県が地域の事情に合わせて決める「建築安全条例」というものもあり、建築基準法を補う形で追加の制限が決められていることがあります。
②用途地域ってなに?:
都市計画区域の中の土地は、その土地をどんな目的で使うか、どんな種類の建物を建てられるかを制限するために、13種類の「用途地域」に分けられています(例えば、第一種低層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、商業地域、工業地域など)。それぞれの用途地域ごとに、建てられる建物の種類(一戸建て、マンション、お店、工場など)や大きさ(建ぺい率・容積率の上限など)が細かく決められています。
久留米市内の特定の土地がどの用途地域に指定されているか、また、その地域での建ぺい率や容積率の上限などを調べるには、久留米市役所の都市計画課の窓口で確認するか、市のホームページで公開されている都市計画情報(「くるめMAP」など)を利用する方法があります。しかし難しいので建築の専門家を頼りましょう。気軽に相談できる建築専門家がいない場合、お気軽に弊社へお問い合わせください。
③建ぺい率と容積率ってなに?:
これらは、その土地にどれくらいの大きさの家を建てられるかを決める、とても大切な数字です。
建ぺい率は、敷地の面積に対して、建物を真上から見たときの面積(建築面積)がどれくらいの割合か、ということです。例えば、敷地の面積が100平方メートルで建ぺい率が50%の場合、建築面積は50平方メートルまでとなります。
容積率は、敷地の面積に対して、家の各階の床面積を全部合わせた面積(延べ床面積)がどれくらいの割合か、ということです。例えば、敷地の面積が100平方メートルで容積率が100%の場合、延べ床面積は100平方メートルまでとなります。
これらの上限の値は、主に用途地域によって決められています。 さらに、家の前の道路の幅が12メートルより狭い場合には、用途地域によって容積率が制限されることがあります。具体的には、住居系の用途地域では「前面道路の幅(m) × 40%」、その他の用途地域では「前面道路の幅(m) × 60%」で計算された容積率と、都市計画で決められた指定容積率とを比べて、より厳しい方が適用されます。
難しいので希望の広さの家が建てられるかどうかは建築専門家に最終チェックをしてもらい土地契約をしましょう。
④高さ制限・斜線制限・日影規制ってなに?:
建物の高さを制限する決まりもいくつかあります。
これらは、周りの家の環境(日当たり、風通し、光の入り具合など)を守ったり、街並みをきれいに保ったりすることを目的としています。
高さ制限には、絶対高さ制限(用途地域によって建物の高さを一定以下にする)、道路斜線制限(道路の風通しや光を確保するため、道路の境界線からの距離に応じて高さを制限する)、隣地斜線制限(隣の家の日当たりや風通しを確保するため、隣の土地の境界線からの距離に応じて高さを制限する)、北側斜線制限(主に住居系の地域で、北側の隣の家の日当たりを確保するために高さを制限する)などがあります。
⑤日影規制:
(にちえいきせい・ひかげきせい)は、一年で一番昼が短い冬至の日を基準にして、一定時間以上の日影を周りの土地に落とさないように建物の高さを制限するものです。この規制は、すべての土地に適用されるわけではなく、用途地域や建物の高さによって対象になるかどうかが決まります。特に10m以上の高さ4階建て以上の建物を建てたい場合は要注意です。
久留米市でのこれらの具体的な決まりについては、都市計画課に問い合わせるか、「くるめMAP」などの都市計画情報で確認する必要があります。が、これも難しいので建築専門家に最終チェックをしてもらいましょう。
⑥接道義務ってなに?:
建築基準法では、建物を建てる敷地は、原則として幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならないと決められています(接道義務)。これは、災害の時の避難や消防活動に必要な通路を確保するためです。
⑦久留米市の都市計画情報:
個別の法律の決まりに加えて、久留米市が作っている街づくりに関する計画も土地選びに影響します。
⑧久留米市都市計画マスタープラン及び久留米市立地適正化計画:
これらは、久留米市の将来の街の姿を示すもので、「コンパクトな拠点市街地の形成と拠点をネットワークする都市構造」を目指しています。具体的には、拠点となる場所の周りに人が住み続けられるようにしたり、毎日の生活に必要なサービス機能を集めたりすることが図られます。この計画に基づいて、「居住誘導区域」や「都市機能誘導区域」が設定されており、これらの区域の外で一定以上の大きさの建物を建てたり開発したりする場合や、都市機能誘導区域の中で誘導施設をやめたりする場合には、市への届け出が必要になります。これらの計画は現在見直しが進められており、令和8年3月に新しくなる予定です。これからの土地の使い方の方向性に影響を与える可能性があるので、どうなっていくか注目しておく必要があります。
⑧建築協定:
地域の住民たちが話し合って、建築基準法で決められた基準にさらに上乗せする形で、より良い住環境を保ったり作ったりするための独自のルール(敷地の最低面積、壁を道路からどれくらい離すか、建物の使い道やデザイン、緑を増やすことなど)を決める制度です。久留米市内にも建築協定がある区域がいくつかあり、市のホームページで協定の名前をクリックすると、区域の地図や概要を確認できます。建築協定のある土地は、統一感のあるきれいな街並みが期待できる反面、建物のデザインなどに制約を受けることになります。この「良い点」と「制約」のバランスを理解し、自分の暮らし方や価値観と合うかどうかを考えることが大切です。
⑨景観条例 :
久留米市景観条例や、筑後川流域景観計画などに基づいて、良い景色を保ったり作ったりするための基準が決められています。建物の高さや色、外に置く広告物の設置、土地を造成する工事などに規制がかかる場合があります。
⑩地区計画:
特定の地区の特性に合わせた詳しい街づくりのルールを決めるもので、久留米市にも地区計画の区域内での建物の制限に関する条例があります。これらは家を建てる前の建築確認申請の時に審査の対象になります。
⑪開発許可:
久留米市の市街化区域と、区域の区別が決まっていない都市計画区域(田主丸地区・北野地区・城島地区・三潴地区)では、1,000平方メートル以上の開発行為(宅地造成など)をする場合に開発許可が必要です。
市街化調整区域の中では、面積に関係なく原則として許可が必要で、許可できる開発行為は法律でかなり制限されています。
⑫盛土規制法:
崖崩れや土砂崩れなどの災害を防ぐため、危険な盛土などを全国共通の基準でまとめて規制する法律(宅地造成及び特定盛土等規制法)が令和5年5月に施行されました。
⑬市街化調整区域と農地転用:
市街化調整区域は、街の広がりを抑えるべき区域とされていて、原則として住宅などの建物を建てることが制限されています。安い土地が見つかることもありますが、建物を建てる許可を得るのがとても難しい点に注意が必要です。
土地の種類が「田」や「畑」などの農地である場合、そのままでは住宅を建てることはできません。農地を宅地などの他の使い道に変えるためには、「農地転用」の許可を農業委員会からもらう必要があります。久留米市では、市街化区域以外の農地を転用する場合、市役所本庁舎15階の農業委員会事務局への申請が必要です。農地の場所(農用地区域内かどうかなど)によって転用できるかどうかが大きく違うので、買う前に必ず農業委員会に相談することがおすすめです。
これらの法律の決まりは複雑でたくさんあるため、土地を買うことを考えるときには、不動産屋さんや建築士、ハウスメーカーなどの専門家に相談して、詳しい確認をすることが絶対に必要です。
特に、久留米市の立地適正化計画が目指す「コンパクトシティ」の考え方と、ハザードマップが示す災害の危険があるエリアを重ねて考えることはとても大切です。人が住むことを誘導している区域が、必ずしも災害の危険が低いエリアと一致するとは限らないため、両方の情報を確認し、安全で便利な土地を選ぶ、複数の視点からのアプローチが求められます。例えば、居住誘導区域の中にあり、かつハザードマップで水害や土砂災害の危険が低いとされている土地が理想的ですが、そのような土地がすぐに見つからない場合は、どれくらいの危険なら許容できるか、あるいはどんな対策(家の基礎を高くする、地盤を改良するなど)をすれば安全を確保できるのかを、専門家と一緒に慎重に考える必要があります。
用途地域名 | 主な建築物の用途 | 建ぺい率上限の目安 (%) | 容積率上限の目安 (%) | 高さ制限・日影規制の目安 |
第一種低層住居専用地域 | 低層住宅 | 30・40・50・60 | 50~200 | 絶対高さ10mまたは12m、日影規制あり |
第二種低層住居専用地域 | 低層住宅、小規模な店舗等 | 30・40・50・60 | 50~200 | 絶対高さ10mまたは12m、日影規制あり |
第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅、病院、大学等 | 30・40・50・60 | 100~500 | 日影規制あり(高さ制限は別途確認) |
第二種中高層住居専用地域 | 中高層住宅、一定規模以下の店舗等 | 30・40・50・60 | 100~500 | 日影規制あり(高さ制限は別途確認) |
第一種住居地域 | 住宅、3000㎡以下の店舗・事務所等 | 50・60・80 | 100~500 | 日影規制あり(高さ制限は別途確認) |
第二種住居地域 | 住宅、10000㎡以下の店舗・事務所等 | 50・60・80 | 100~500 | 日影規制あり(高さ制限は別途確認) |
準住居地域 | 道路沿道としての特性にふさわしい住宅、店舗、自動車関連施設等 | 50・60・80 | 100~500 | 日影規制あり(高さ制限は別途確認) |
近隣商業地域 | 近隣住民の日用品供給店舗等 | 60・80 | 100~500 | 日影規制あり(高さ制限は別途確認) |
商業地域 | 銀行、映画館、百貨店等 | 80 | 200~1300 | 日影規制の適用が少ない(高さ制限は別途確認) |
準工業地域 | 環境悪化のおそれのない工業施設、住宅、店舗等 | 50・60・80 | 100~500 | 日影規制あり(高さ制限は別途確認) |
工業地域 | あらゆる工場 | 50・60 | 100~400 | 日影規制の適用が少ない(高さ制限は別途確認) |
工業専用地域 | 工場専用(住宅不可) | 30・40・50・60 | 100~400 | 日影規制の適用なし(高さ制限は別途確認) |
注:上記は一般的な目安であり、久留米市の具体的な建ぺい率・容積率、各種制限は、都市計画図や関連条例で必ず確認してください 。
2.2. 土地の安全性と物理的条件の確認
法律で決められたことをクリアしても、その土地が安全でなければ安心して暮らすことはできません。地盤の強さや災害の危険性など、物理的な条件もしっかりと確認しましょう。
①軟弱地盤の危険性:
地盤が弱い土地に家を建てると、建物の重みで不均等に沈んでしまう「不同沈下」が起きたり、地震の時に地盤が液体状になる「液状化」が発生したりする危険があります。これらは建物の傾きや損傷を引き起こし、住まいの安全性を著しく損ないます。過去に沼地、池、田んぼだった土地や、埋め立て地、盛り土で造られた土地、川や海岸に近い土地などは、地盤が弱い可能性が高いと考えられます。また、周りの建物に傾きが見られる地域も注意が必要です。
②地盤調査:
安全な家を建てるためには、地盤調査が欠かせません。主な調査方法には、比較的簡単で費用も抑えられる「SWS試験(スクリューウェイト貫入試験)」(費用目安:5万円程度)、より詳しい地盤情報を得られる「ボーリング調査」(費用目安:15万~30万円程度、掘る深さによって変わります)、地面を傷つけずに広い範囲を調査できる「表面波探査法」(費用目安:5万~8万円程度)などがあります。
③地盤情報の確認:
国立研究開発法人防災科学技術研究所の「J-SHIS Map」では、全国の地盤の揺れやすさ(表層地盤増幅率)や、地震の時に液状化の可能性が高い地形(昔の川の跡、埋め立て地など)を地図上で確認できます。また、産業技術総合研究所(産総研)地質調査総合センターが公開している「水文環境図」では、筑紫平野(久留米市を含む)の地下水位、地質構造、地下水の流れる方向などの情報が得られ、土地の成り立ちや地盤の特性を理解する上で参考になります。
④ハザードマップの活用:
各市町村が作って公開しているハザードマップは、洪水、土砂災害、高潮、津波などの自然災害による被害が予想される区域や避難場所などを示した地図です。土地選びの際には必ず確認しましょう。ハザードマップで色が塗られている区域は特に注意が必要ですが、色が塗られていないからといって絶対に安全というわけではありません。予想を超える規模の災害が発生する可能性も考えて、地形情報などと合わせて総合的に判断することが大切です。
⑤久留米市のハザードマップ:
久留米市では、ウェブ版ハザードマップ「くるめMAP」を通じて、洪水、高潮、内水氾濫(市街地の水があふれること)、土砂災害、農業用ため池のハザードマップを提供しています。洪水ハザードマップは30の河川の情報が追加されて内容が充実しています。
「くるめMAP」はパソコン(フル機能版がおすすめ)やスマートフォン(シンプル版がおすすめ)で見ることができ、印刷機能も強化され、凡例(記号の説明)や場所ごとの浸水の深さの数値、メモ欄などが追加されています。
紙のハザードマップも提供されており、土砂災害(特別)警戒区域がある校区(東国分、御井、山川、上津、高良内、山本、草野、荒木、青峰、竹野、水縄の11校区)は、「内水ハザードマップ(土砂あり)」として表記されています。
浸水が予想される区域や、土砂災害警戒区域(特に建物が壊れたり住民の命や体に著しい危害が生じるおそれのある土砂災害特別警戒区域)に該当するかどうかを必ず確認しましょう。
⑥液状化リスク:
久留米市の「くるめMAP」には、今のところ液状化ハザードマップは載っていません。しかし、福岡県が警固断層南東部で地震が発生した場合の県内の液状化の危険度を示した分布図を公開しており、これは250m四方単位でPL値(液状化指数)に基づいて危険度を評価したものです。国土地理院の「重ねるハザードマップ」でも、この福岡県の液状化危険度分布図を確認することができます。
⑦過去の災害履歴:
その土地や周りの地域で過去にどんな災害が発生したかを調べることも重要です。「災害は繰り返す」と言われるように、過去に被害があった場所は、将来も同じような危険を抱えている可能性があります。市役所の防災担当課や地域の古くから住んでいる人、郷土資料館などで情報を集められる場合があります。
⑧土地利用履歴の確認:
買おうと考えている土地が、過去に工場、ガソリンスタンド、廃棄物処理場、農薬を使っていた農地など、土壌汚染を引き起こす可能性のある施設として使われていなかったかを確認します。調べる方法としては、法務局で手に入る登記簿謄本(過去の持ち主や土地の種類の移り変わりを確認)、住宅地図や航空写真(年代別のものを比較)、古地図(図書館や資料館で見る)、行政(市役所の環境保全課など)への聞き取りなどがあります。久留米市立図書館では住宅地図の閲覧やコピーサービス(著作権法上の制限あり)を提供しています。また、福岡県立図書館では古地図や絵図を持っており、一部はオンラインのデジタル画像などで見ることができます。
⑨久留米市の土壌汚染対策:
久留米市では、土壌汚染対策法に基づいて、有害物質を使っていた特定の施設をやめた時や、一定以上の大きさの土地の形を変える(掘削など)時に、土地の持ち主などに土壌汚染の状況調査とその結果報告を義務付けています。調査の結果、基準を超える汚染が見つかった場合、健康被害のおそれがあるかどうかによって「要措置区域」または「形質変更時要届出区域」に指定され、その情報は公開されます。
⑩擁壁の安全性:
高さの違う土地では擁壁(ようへき:土砂崩れを防ぐ壁)が作られていることがありますが、その安全性を確認することが重要です。擁壁に大きなひび割れ、膨らみ、傾きがないか、水抜き穴がちゃんと機能しているか(詰まっていないか、水が染み出していないか)などをチェックします。特に高さが2メートルを超える古い擁壁は、今の基準を満たしていない可能性もあるため注意が必要です。擁壁の上や下にある土地も、擁壁が崩れる危険を考える必要があります。
⑪高低差のある土地:
擁壁以外にも、敷地の中や隣の土地との高さの差が大きい場合は、土地をならす費用や家を建てる上での制約、日当たりやプライバシーへの影響などを考える必要があります。
12境界の明確化:
隣の土地との境目がはっきりしないまま土地を買うと、将来的に隣の人との間でトラブルが起きる可能性があります。境界を示す杭などがあるかを確認し、はっきりしない場合は売主に確認するか、土地家屋調査士に頼んで境界を確定させる測量を検討しましょう。
ハザードマップは広い範囲の危険度評価には役立ちますが、個別の土地の細かい地形や排水の状況、地盤の詳細まではカバーしきれません。そのため、マップでの確認と、専門家(建築士、地盤調査会社、土地家屋調査士など)を伴った現地での詳しい観察・調査を組み合わせることが、より正確な危険度評価につながります。特に久留米市のように筑後川などの川が多く、過去に内水氾濫(市街地の水があふれること)の履歴もある地域では、この複合的なアプローチが重要となります。
また、土地の「履歴」調査は、土壌汚染や地盤沈下といった物理的な危険だけでなく、過去の災害履歴や周りの地域の移り変わりなど、将来の住環境や資産価値に影響するかもしれない「物語」を明らかにすることがあります。古地図や登記簿からその土地がかつてどんな姿だったかを知ることは、表面的な情報だけでは見えない危険と価値の両面を評価する上で非常に役立ちます。
続編へ続く
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担当:安丸
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