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2025年新築住宅の着工戸数の展望と影響要因分析

2025.05.14

 

 

2025年新築住宅の着工戸数の展望と影響要因分析をしました。

時代の変化やニーズの変化に正しく対応し、正しい家づくり、建築づくりをお客様に提供していくことが、地域の工務店、設計事務所に必須の能力になります。

「2025年は設計力と再現性ある規格力」が問われます。

 

地域工務店が設計力を鍛えたり、設計事務所との協業が真に必要になるのかもしれません。

株式会社日々吉ではそのお手伝いができますので是非参考にされてください。

 

 

目次

1.エグゼクティブサマリー:2025年新設住宅着工戸数の見通し

2.2025年新設住宅着工戸数の詳細予測

  2.1. 主要調査機関による予測の集約

  2.2. 利用関係別内訳(持家、貸家、分譲住宅/マンション)

3. 2025年住宅市場への主要影響要因

  3.1. 建設資材価格とサプライチェーンの動向

  3.2. 金利環境と住宅ローンの動向

  3.3. 政府の政策と規制変更の影響

  3.3.1. 2025年省エネ基準義務化(改正建築物省エネ法、改正建築基準法)

  3.3.2. 補助金・税制優遇措置の役割

  3.4. 建設部門における労働市場の課題(「2025年問題」)

  3.5. 広範な経済状況と消費者マインド

 

4.総括的展望と結論

 

 

1. エグゼクティブサマリー:2025年新設住宅着工戸数の見通し

 

各機関の着工予測を見ると、2025年度の新築住宅の着工戸数は、だいたい79万戸くらいで推移しそうです。

2024年度の実績(4号特例の廃止等の法改正前の駆け込み需要で増えました)と比べると、少し減る(前の年度より約0.8%~0.9%減)見通しです 。

しかしこの見通しには甘い部分も感じられもっと減って着地するのではと予想しています。

 

市場は、いくつかの要因が複雑に絡み合っています。

マイナスの要因としては、依然として高いままの建設資材の価格 、上がり気味の金利 、深刻な人手不足(いわゆる「2025年問題」)、そして2025年4月の省エネ基準の義務化や4号特例が縮小されることによる駆け込み需要、そしてその反動としての落ち込みが考えられます 。

一方で、賃貸住宅や都市部の分譲マンションへの継続的な需要(ただし賃貸は伸びが少しゆっくりになるかもしれません)、省エネ性能の高い住宅や子育て世帯向けの住宅への政府による補助金制度 が支えとなりそうです。

住宅の種類別に見ると、持ち家や分譲の一戸建ては減っていくと予想される一方で、賃貸住宅と分譲マンション(特に大きな都市部)は比較的しっかりとした動きが続くものの、賃貸の伸びは少し鈍化する予測となっています。

2024年度の新しい住宅の着工戸数は、約81万6018戸(前の年度より2.0%増)になりました。これは主に、2025年4月から始まる省エネ基準の強化や「4号特例」という建築基準法の改正に対応するために、建設工事が前倒しで行われたためです 。

2024年度の着工戸数は、2025年4月から始まる新しい省エネ基準(より厳しく、コストアップにつながる可能性のある)を避けるために、前倒しで進められたプロジェクトによって大きく増えました 。

特に2025年3月単月では、前の年の同じ月と比べて39.1%も急激に増加 。この結果、2024年度の81万6018戸という数字は、実際の均した要求される戸数よりもかなり多い着工棟数になりました。

 

その理由により2025年度に予測される約79万戸への減少予測は少し楽観的過ぎる気もしていて場合によっては75万戸をきるような悲惨な状況になるかもしれないと感じています。これらの数字には法改正による確認申請期間が延びたり、4号建築を外れる建物は確認申請前に仕様の決定等をする必要(省エネの手続きの変更手続きを避けるため)があり、着工できなくなる数字等が 加味されていないからです。「もっと厳しい数字で着地する」これが当サイトの予測です。

しかし、2025年度の前の年の同じ時期と比べた増減率をそのまま受け取るのは慎重になった方がよいかと考えます。

政策による変動が、市場の本当の姿を見えにくくしている可能性も考える必要があります。

 

 

2. 2025年新設住宅着工戸数の詳細予測

 

2.1. 主要調査機関による予測の集約

 

2025年度の新しい住宅の着工戸数については、いくつかの調査機関が予測を発表していて、その多くが前の年度から少し減る傾向にあると見ています。

  • 建設経済研究所(CEIR)/経済調査会(ERA):
  • 2025年4月予測:2025年度79.0万戸(2024年度予測79.7万戸から0.9%減)。一部の資料では78万9500戸 10 や78万9400戸 という数字もありますが、だいたい同じくらいです。
  • 2025年1月予測:2025年度78万9400戸(2024年度予測から0.8%減)。 これらの機関は詳しい内訳と一緒に予測を出していて、よく参考にされています。
  • 野村総合研究所(NRI):
  • 2014年予測(2025暦年):62万戸 。これはかなり前の予測で、長期的な人口の動きをもとにしている可能性が高く、最近の政策や市場の動きを反映していないため慎重に考える必要があります。
  • より新しい2023年6月のNRI予測がありますが、その資料では2025年の具体的な数字は出ていません。
  • その他機関
  • 2025年度平均予測:約78.0万戸くらいでした。
  • 最大値:80.0万戸。
  • 最小値:75.3万戸。 これはいくつかの予測機関の間で、だいたいの意見が一致している範囲があることを示しています。

以下に主要調査機関による2025年新設住宅着工戸数予測の比較を示します。

表1:主要調査機関別 2025年新設住宅着工戸数予測比較


 

調査機関予測発表時期2025年度 総戸数予測2024年度実績/予測比
建設経済研究所/経済調査会2025年4月790,000戸-0.9% (対79.7万戸予測)
建設経済研究所/経済調査会2025年1月789,400戸-0.8% (対79.7万戸予測)
各社平均(住宅金融支援機構まとめ)2025年2月平均 780,000戸(2024年度実績対比要)
野村総合研究所2014年7月620,000戸 (直接比較不可)

 

調査機関によって使うモデルや前提が違うので、予測の数字には少し違いが出ます。

 

 

2.2. 利用関係別内訳(持家、貸家、分譲住宅/マンション)

 

多くの予測で、持ち家と分譲の一戸建ては引き続き減り、貸家は少し減る、そして分譲マンション(特に都市部)は比較的しっかりとした動きか、少し増えるという見方がされています 。

 

  • 持家: 21.5万戸(前年度比1.8%減)。理由:土地や建設費が高くなっていることや、初めて家を買う人たちが慎重になっていること。「子育てエコホーム支援事業」などの補助金でいくらか支えられてはいますが、実質的なお給料が減っていたり、住宅展示場に来る人があまり増えていないことなどが心配な点です。
  • 貸家: 34.3万戸(前年度比1.2%減)。理由:持ち家を手に入れるのが難しくなっているため、賃貸のニーズは続くものの、金利が上がることで投資家の気持ちが冷え込むかもしれません。
  • 分譲住宅: 22.6万戸(前年度比0.7%増)
  • マンション: 増えると予測。都心部や湾岸エリアでは、値段が高くても欲しがる人が結構います。
  • 一戸建て: 減ると予測。新しく土地を買うのを控える動きがあります。

分譲住宅というカテゴリーは、2025年度の一部の予測では全体として少し増えるか横ばい(例えば、1で0.7%増、13で0.1%増)を示していますが、これは、中身の大きな違いを見えにくくしています。分譲マンションは増えると予想される一方、分譲の一戸建ては減ると見込まれています 。マンションは、特に東京のような都心部では、値段が高くても根強い人気があります 。これは、都会的な暮らしを好む人が増えたり、投資目的だったり、あるいは少人数の世帯が増えていることなどが理由かもしれません。反対に、分譲の一戸建ては、土地の値段が高いことや買う人が慎重になっているといった向かい風にさらされていて、特に家族で住む人たちが買いやすいかどうかという問題に影響を受けやすいです 。そのためマンションと一戸建てで戦略を分けて考える必要があります。都市部のマンション開発業者はこれからもチャンスがあるかもしれませんが、一戸建てを中心にしている方は、もっと競争力のある値段をつけたり、付加価値と差別化をより明確にした提案したりしないと厳しい市場になります。これは、都市に人が集まったり、家族の形が変わってきたりといった、もっと広い社会や経済の動きも反映しています。

表2:2025年度 利用関係別住宅着工戸数予測内訳(建設経済研究所/経済調査会 2025年4月予測に基づく)


 

利用関係2025年度予測(戸)2024年度実績比主な要因/理由
持家215,000-3.6%高価格、慎重な購入者、補助金支援
貸家343,000-3.9%持続的需要、金利上昇懸念
分譲住宅(計)226,000-1.5%マンション堅調、戸建弱含み
└ マンション(10.5万戸超と推定)(+)都市部需要
└ 一戸建て(12.2万戸未満と推定)(-)土地価格、購入見送り

 

 

全体の戸数だけでは、状況のほんの一部しか分かりません。持ち家、貸家、分譲といった種類ごとの動きは、それぞれ違ったニーズや影響の受けやすさによって大きく変わります。このように分けることで、特定の種類の住宅を専門にしている会社にとっては、とても大切な詳しい情報が得られます。それぞれの種類の予測の裏にある「なぜそうなるのか」(主な理由)を理解することは、戦略を立てるのに役立ちます。例えば、賃貸のニーズは続いているけれど、金利が上がることで投資家の気持ちが冷え込んでいる場合、これは市場のちょっとした変化のサインかもしれません。

 

 

3. 2025年住宅市場への主要影響要因

 

3.1. 建設資材価格とサプライチェーンの動向

 

建設資材の価格は依然として高いままで、2025年もこの状態が続くと考えられています 。これは、「ウッドショック」や「アイアンショック」といった木材や鉄の価格高騰が長引いていること、世界的な供給網の混乱、ウクライナの状況、そして輸入コストを押し上げる円安が原因です 。

  • 木材: 値段は一番高かった時よりは少し下がりましたが、新しい省エネ基準に合わせるための特別な材料が必要だったり、円安だったりするので、ショックが起こる前の値段にすぐには戻らないと考えられます 。木材や木で作られた製品は、2021年の半ばから値段が上がりました 。建設用の木材(建設資材の値段の動きを示す指数の一部)は、2024年3月の時点で136.9(2015年を100とした場合)です。
  • 鉄鋼: 鉄の値段も木材に続いて上がりましたが、経済産業省は、2025年度の最初の3ヶ月(4月から6月)の鉄骨の需要が、前の年の同じ時期と比べて4.0%減ると予測しています 。鉄の値段が下がってくると良いのですが。
  • セメント/コンクリート: 大手のセメント会社は、エネルギーの値段が高いままなことや、人件費、運送費が上がっていることを理由に、2025年4月1日に出荷するものから、1トンあたり2,000円から2,200円値上げすると発表しました 。東京地区の生コンクリートの値段も、2025年4月1日から1立方メートルあたり3,000円(14%)上がります 。ただでさえ高くなっているコンクリートが更に上がるとのこと。木造で作るにしてもここ数年の基礎工事の金額上昇は、なかなか苦しいものがあります。

建設資材の値段の動きを示す指数(全国平均)は、2025年3月の時点で140.6(2015年を100とした場合)で、前の月より0.2%上がり、前の年の同じ月より3.2%上がっています 。

材料費が高いままなのは、建設コスト全体を直接押し上げ、開発業者の利益を圧迫し、住宅の値段を上げることになります。これが特に、持ち家や分譲の一戸建てを買いたいという人の気持ちを冷まさせる原因になっています 。

「なかなか下がらない」高い材料費と、新しい規制によるコスト負担が重なる影響は深刻です。材料費は、世界や国内のいろいろな理由で数年間高いままで、これらのコストは「なかなか下がらない」状態になり、2025年になっても大きい政治経済の変化がない限り大幅に下がることはなさそうです。2025年4月からの新しい省エネ基準は、もっと性能の良い材料や追加の部品(例えば、高性能な断熱材やトリプルガラスの窓など)が必要になる可能性があり、さらにコストが上がることになります 。補助金の制度はありますが、これらの重なったコストアップを全部カバーできません。そのため、開発業者や建設業者は、今までの高い材料費と新しい規制によるコストという、二つの難しい問題に直面します。これは、家を買う力をさらに圧迫するでしょう。これらのコストを自分たちで吸収できるか、あるいは(価格などに)上乗せできるかが、2025年に利益を出せるか、プロジェクトを進められるかの鍵になります。また、コストを抑えるために家が小さくなったり、コストパフォーマンスを重視した設計が進んだりする可能性が高いです。つまり設計の力をが真に問われる時代が来ます。

 

 

3.2. 金利環境と住宅ローンの動向

 

日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策をやめ、その後も少しずつ金利を上げ、2025年1月の時点では政策金利は0.5%になっています。

  • 住宅ローンへの影響
  • 変動金利: 主な銀行は、2025年4月か5月から、変動型の住宅ローンの金利を約0.25%上げました 。2025年5月の時点での変動金利の市場の相場は、0.6%から0.7%くらいで、1年前の0.3%から0.4%より上がっています 。
  • 固定金利(フラット35): フラット35の金利も上がり、2025年4月の時点では1.94%(借り入れ期間21年から35年)になりましたが、5月には1.820%へと少し下がりました 。これは、それでも1年前よりは高いレベルです。
  • 今後の見通し: 一部の経済専門家は、2025年の間に日本銀行がさらに1回から3回金利を上げ、年末までには政策金利が0.75%か1.00%になるかもしれないと予測しています。長期金利は、2025年の終わりまでには0.8%から1.6%の間になると予測されています。

金利が上がることは、家を買う人がお金を借りるコストを増やし、買いやすさを低下させます。これは特に、持ち家が欲しい初めて家を買う人など、金利の動きに敏感な人たちの需要を抑えるかもしれません。また、賃貸物件に対する投資家の気持ちにも影響を与えます。

長い間続いたゼロ金利やマイナス金利の状態からの変化は、気持ちの面でも大きな影響があります。日本は、ものすごく長い間、とても低い金利、ゼロ金利、あるいはマイナス金利という状態を経験してきました。お金を借りる人、特に若い世代は、この状態に慣れてしまい、それが当たり前だと思っていたかもしれません。最近の金利の方向が変わったことは、他の国と比べて絶対的な上がり方としては緩やかでも、気持ちの上では大きな変化を意味します。「金利は上がっていく方向だ」という認識が広まることで、家を買おうかと考えている人たちの間で警戒心が高まり、変動金利ローンの将来の金利上昇を心配したり、固定金利が昔ほど魅力的ではないと感じたりするかもしれません。そのため、直接お金の面で影響があること以上に、金利が上がることへの不安やリスクを感じることが、買う人たちの間で「もう少し様子を見よう」という気持ちを生み出し、2025年の需要をさらに抑えるかもしれません。これは、実質的なお給料の伸びが物価上昇に追いついていない中で、特に重要なことです 。

地域の工務店や設計事務所にとってお金の提案に強くなることが必須のスキルになってきます。

 

 

3.3. 政府の政策と規制変更の影響

 

3.3.1. 2025年省エネ基準義務化(改正建築物省エネ法、改正建築基準法)

 

2025年4月1日からは、住宅を含むすべての新しい建物で、より厳しい省エネ基準に合わせることが義務になりました。また、小さな木造の建物に対する「4号特例」というルールも見直され、構造計算や省エネ基準に合っているかどうかの確認が必要になる建物の範囲が広がりました。

このルールの変更の前に、特に2025年3月(2024年度の最後の3ヶ月)には、古い基準(より緩やかでコストが低いかもしれない)のうちに着工しようという動きが活発になり、「駆け込み需要」が起こりました 。2024年度の着工戸数はこの影響で2.0%増えて81万6018戸になりました 。

株式会社日々吉の本社のある福岡県では2025年3月に前の年の同じ月と比べて74.7%も増えるなど、地域によってはっきりとした動きが見られました 。

この駆け込み需要の反動で、2025年度には着工戸数が減ったり、あまり伸びなかったりすると予想されます。前倒しされた需要が元に戻り、市場が新しい(もしかしたらよりコストがかかる)基準に慣れていくためです 。これが2025年度の全体の着工戸数が少し減るという予測の主な理由の一つですが、どれくらい反動があるかはまだはっきりしません。いくつかの報告書では、この反動で減ることについて、具体的な数字での分析は詳しく書かれていませんが、基本的な前提として考えられています 。新しい基準は建設コストを増やすと予想されていて、これが住宅の値段をさらに押し上げます。

 

3.3.2. 補助金・税制優遇措置の役割

 

「子育てエコホーム支援事業」のような取り組みは、特に子育て中の家庭や若い夫婦向けに、省エネ住宅を買うための補助金を出しています 。2025年度には補助金が増え、性能の高い「GX指向型住宅」には最大で160万円がもらえます 。その他にも、「先進的窓リノベ2025事業」(窓の断熱リフォームに最大200万円)や「給湯省エネ2025事業」(効率の良い給湯器に最大20万円)といった補助金もあります 。住宅ローン控除の子育て世帯向けの特別な扱いは1年間延長され、親や祖父母から家を買うためのお金をもらうときの非課税枠(最大1,000万円)も続きます 。

これらの対策は、買いやすさの問題を少しでも和らげ、品質が高く省エネ性能の良い住宅がたくさん建てられるように後押しするためのものです。でも、材料費や新しい基準に合わせるためのコストアップの大きさを考えると、その効果は限られているかもしれません。

ルールの「厳しさとお得さ」は、業界の安定に影響を与えます。省エネ基準の義務化は、長い目で見れば環境目標や住宅の品質アップには良いことですが、短期的には市場の動き(「駆け込み」とその後の「反動」)を生み出しています。この「厳しさとお得さ」の効果は、建設会社にとって人手や材料、お金の流れの計画を難しくします。

「4号特例」が同時に変わることは、戸建て住宅のプロジェクトの管理や設計の負担を増やし、さらに複雑にします。補助金は使えますが、どれくらい広まるかや、コストアップをどれだけカバーできるか、そして最初の駆け込み需要の後もずっと需要を刺激できるかという本当の効果は、2025年度を通して見ていく必要があります。そのため、2025年の建設業界は、調整の時期を進んでいくことになります。これらの変化を予測し、新しいルールやコストの仕組みにうまく対応できる会社が有利になるでしょう。小さな建設業者は、増えるルールの負担やコストによって苦労するリスクがあります。政府が支援策をうまく調整できるかどうかが、駆け込みの後に急に落ち込むのを避けるためにとても大切になります。

 

 

3.4. 建設部門における労働市場の課題(「2025年問題」)

 

建設業界は働く人の高齢化がかなり進んでいて、2023年の時点で約36%が55歳以上、29歳以下の若い人は約12%しかいません。団塊の世代の経験豊富な職人さんたちがたくさん退職する時期を迎え、専門的な技術が失われることが心配されています。若い人がなかなか入ってこないのも深刻で、業界のイメージ(「3K」:きつい、汚い、危険)、長い労働時間、福利厚生があまり整っていないことなどが原因だと言われています。建設業で働く人の数は、1997年の685万人から2021年には482万人に減りました。

経験のある建設職人さん1人あたりが建てる新しい家の数は、2010年の約0.8戸から2020年には約1.0戸に増え、2025年には約1.1戸になると予測されていて、深刻な人手不足を表しています。2025年のルールの変更(新しい省エネ基準、4号特例の改正)は、設計や検査でやることが増えるなど、仕事の量をさらに増やし、限られた人手への負担を重くすると予想されます。

人手不足は、プロジェクトの遅れや人件費の上昇(建設コスト全体が高くなることにつながる)、そして需要があっても建てられる家の数に限界をもたらすかもしれません。

「2025年問題」は、家を供給する上での構造的な限界として働き、新しいルールによってさらに悪くなります。働く人の高齢化と新しく入ってくる人が少ないという人口の動きの問題は、日本の建設業界にとって長い間の構造的な問題です。これはただ人数が足りないというだけでなく、熟練した経験豊かな働き手が失われることを意味します。2025年に全面的に始まる新しい省エネや建築基準のルールは、建設に必要な複雑さや時間を増やします。これは、もし需要がしっかりしていて、材料やお金の調達に問題がなくても、熟練した働き手が絶対的に足りないことが障害となり、完成できる全体の戸数を制限するかもしれないということです。そのため、住宅着工戸数の予測は、ある程度の建設できる力があることを、はっきりとは言わないまでも前提にしているかもしれません。もし人手不足が思ったより深刻になったり、ICT(情報通信技術)やDX(デジタルトランスフォーメーション)で生産性が期待通りに上がらなかったりすれば、実際に完成する戸数は需要や予測よりも少なくなるかもしれません。これは、手間を省ける建設方法や技術へのニーズを高めます。また、建設業での賃金上昇の圧力が続き、コストをさらに押し上げることも示しています。

地域工務店にとって新しい働き方への改革ができるかどうかは生き残りへの試金石となります。何から始めていいかわからない方は是非(株)日々吉へご相談ください。

 

 

3.5. 広範な経済状況と消費者マインド

 

2025年のGDP(国内総生産)の成長率は、緩やかだと一般的に予測されています(例えば、実質GDPで1.0%から1.3%増えるなど )。春の労働組合と会社の交渉(春闘)ではお給料が上がっていますが 、物価上昇によって実質的なお給料の伸びは鈍くなったりマイナスになったりしていて、これが消費者の買う力や信頼感に影響を与えています。材料費が高くなっていることや全体的な物価上昇は、家を買うことに対する消費者の気持ちを悪くしています 。長い目で見た人口の減少と高齢化は、住宅の需要全体を根本的に抑えます。世帯の数もピークを迎えるか、減っていくと予測されています。

消費者の気持ちが弱く、実質的な所得があまり増えていないことは、特に新しい家のような大きなお金が必要な買い物において、家を買おうかと考えている人たちをより慎重にさせます。これは特に、持ち家の分野に影響を与えます。

表面的な経済の数字と、家庭の実際のお財布事情の間にはズレがあります。名目GDP成長率や平均のお給料の上昇率のような大きな経済の数字は、良い傾向を示すかもしれません。しかし、特に日用品や、今では住宅(コストや金利が上がっているため)での物価上昇が続いていることは、多くの家庭が実質的に使えるお金や買う力が増えたと実感していないことを意味します。新しい家を買うという決定は、家庭の今のお金の状況と将来の見通しに大きく影響されます。これらの生活費のプレッシャーで消費者の気持ちが引き続き落ち込んでいれば、たとえ住宅ローンの金利が世界的に見て歴史的に「低い」レベルであっても、買えると感じる力や借金をする意欲は抑えられるでしょう。そのため、2025年の住宅の需要は、実質的なお給料と消費者の信頼感の動きにとても敏感になります。実質的な所得がはっきりと回復しなければ、特に持ち家の分野で、今予測されているよりも目立った住宅着工戸数の落ち込みにつながるかもしれません。供給側への補助金だけに注目した政策は、家庭の根本的なお金の不安がなくならなければ、十分ではないかもしれません。

お金の提案に強くなる。これも大事な一年になります。

 

表3:主要影響要因の概要と2025年の予想される影響


 

要因現状/トレンド2025年住宅着工への影響(+/-/混在)
資材コスト高止まり継続
金利上昇トレンド
省エネ義務化2025年4月施行混在(コスト増は負、品質は正、反動減)
政府補助金2025年度拡充正(コスト増を完全相殺できぬ可能性)
労働力不足悪化負(供給能力制限、コスト増)
実質賃金停滞/減少

住宅市場は、たくさんの互いに関係する要因によって影響を受けます。この表は、これらの主な動きの要因、その今の状況、そして予想される影響の方向を短くまとめたものです。これによって、建築業界に働いている複雑な力をすぐに理解することができます。

 

 

 

 

4. 総括的展望と結論

 

2025年度は、日本の新設住宅市場にとって再調整の年となる見込みです。これは棟数だけでなく、設計事務所や工務店の営業の変革や間接部門の変革をしないと、その後の生き残りが難しいことも意味しています。2024年度後半の政策主導の急増の後、約79万戸への緩やかな減少が予想されています。しかし、この表面的な数値は、根強い逆風と的を絞った支援策との複雑な相互作用を的確に反映していないような気もします。着地はもっと厳しい数字になるのではないでしょうか。業務の複雑化による労務や時間の負担増分を合理化を行い着工棟数を守っていかないと悲惨な数字になります。

 

2025年はニーズの変化や購買マインドの変化により、建築会社や設計事務所に求められる能力に変化が起きています。これに建築会社や設計事務所がどのように対応していくか。

 

株式会社日々吉では

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