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間取りの事例 007

やまぐち空間計画

これまでにつくった間取りを語るカテゴリ、第７回です。今回は敷地条件の反映、そして「人の目線の高さ」を意識した間取りをご紹介しましょう。

図面を見ますと、玄関にたどり着くまでに長い階段があります。そして横には「地下：掘込車庫」の記載。この土地は南側の前面道路から3.6ｍほども高いところにあるんです。道路境界線には高い擁壁があり、その段差を利用して車庫がつくられています。

こういう敷地は山手の街区には割によくみられます。箕面市や西宮市、宝塚市など、いわゆる「坂の町」の土地を造成したところに発生しやすい、高低差のある敷地ですね。

ちなみにこの敷地は南側道路なので車庫の上には家が載っていません。それが基本ですが、逆に北側道路の場合で南側にお庭を取るならば、車庫の上に建物を載せざるを得なくなることも。それが可能な構造の車庫になっているか、事前に許可関係をしっかり確認しておくことが重要です。

さて、こうした「道路に至るまでの長い階段」をもつ敷地では、前回もお話した「家事動線」の考え方もちょっと違ってくるはず。その中でこの間取りに反映したのは「ゴミ出し」の動線です。

玄関と、キッチンからの勝手口がすぐ横に位置しているのにお気づきでしょうか？ポーチから勝手口は見えず、しかし勝手口からポーチへはデッキを介してすぐそば。外の階段を上がりきったところがポーチですから、キッチンから前面道路まではこれがほぼ最短距離です。

道路と敷地に段差がない場合は、このような間取りにすると外観がちょっと変な感じになります。玄関ドアと勝手口のドアがすぐ近くに並びますから。しかし、道路よりずっと高いこの敷地ではそれは見えないので、動線効率の最適化を優先しているわけですね。

内部の構成は、１階は東側の玄関からシューズクローク、納戸、水廻りが北側。南側にLDKがあり中央に階段を含む吹抜けがあります。２階は東側から北側にかけて寝室とWIC、書斎のセットとトイレ。吹抜けを含む西から南は、いずれ個室に分けていく予定の広いフリースペースです。

そしてこの間取りでは、住まい手さんのご要望で「畳」が居間と寝室に敷かれていますね。LDKの一部に畳を敷く場合、私が常に意識することがあって、それは「人の目線の高さの違い」なんです。

ダイニングは椅子座、居間は床座で、目線の高さは40cmほど違いますから、椅子に座る人のすぐ横で床に人が座っているというのは、どちらの人もなんだか落ち着かない感じですよね。なので、同じLDKとは言っても、出来れば「コーナー分け」をして距離をとることが望ましいと考えます。

そこでこの間取りのLDKのあり方を再度ご覧ください。東から西に向かって、キッチンで建っている人、ピアノやテーブルやカウンターで椅子に座っている人、畳で床に座っている人と、目線の高さが順に低くなるように位置関係がつくられています。

居間の畳スペースは、来客のお泊りがあった時にも使われる想定です。といって部屋を間仕切るのはもったないですから、こうしてちょっと奥まった感じの場所にしておけば、そうした利用の際にも落ち着いた場所になると思うんです。

それともう一点、この１階の間取りには玄関から水廻りの前を通る「廊下」があります。以前も書いたように出来れば廊下は無い方が面積を得するんですが、この間取りでは必要でした。そしてキッチン、ピアノ前、畳の居間と３箇所でつながっています。

これが何を意味するかというと、くるっと回って動ける「回遊動線」が２ヶ所出来ている、ということ。家の中に「行き止まり」はなるべく無くし、くるくるとあちこち動きやすい間取りの方が便利なのは、言うまでもないでしょう。

今回も主に「動線」の話になってしましましたが、もちろん検討項目はそれだけではなくて、日照を家の中に取り込むことや庭とのつながり、風の流れなども併せて考え、その結果としてこうした形に着地させています。特にこの吹抜けは気持ちよさそうですよ。

しかし、やはり間取りの中に住むのは人ですから、動きやすさという心地よさ、居心地という心地よさ、どちらも大事。敷地の持ち味とご家族のご要望をそうした心地よさという意味合いにおいて統合していくこと、間取りづくりとは即ち、まさにそういう作業なんです。

※私のブログには他の間取り事例も多々ございます。やまぐち空間計画WEBサイトにて、是非ご覧くださいませ。