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間取りの事例 003

やまぐち空間計画

今までつくってきた間取りをご紹介するシリーズ、第３回は木造３階建の住まいです。

都市部では結構多くある木造３階建ですが、３階になる理由としてはやはり第一に、敷地面積が限られているということでしょう。家の床面積をどう確保するかという検討の中で、容積率（延床面積／敷地面積）制限が200％である用途地域の場合には、３階建という選択肢が出てきますね。

純木造３階建は、２階建と比べると構造的な規制がより厳しくなります。具体的には特に１階の耐力壁がたくさん必要になったりするのですが、それを前提で間取りを考えるだけの話なので、そう大きな問題ではありません。

ただし３階建の場合、敷地面積が狭いということは周辺の建物がすぐ近くにあるという意味ですし、実際「密集地」という感じの場所であることが多い。周辺環境との折り合い方は広々とした敷地よりもずっと知恵を働かせる必要があると言えるでしょう。

この敷地は北側が道路。そして絵にも少し隣家を描いていますが、東側と南側には同じく３階建の隣家がすぐ近くに迫っているという、なかなか厳しい条件でした。しかもお客さまのご希望で駐車場を２台確保する必要もあったため、かなり検討に時間を要した記憶がありますね。

南側に隣家が迫るので、建物は敷地内でなるべく北側に寄せ南に「空き」を設けることで、家にお日様が入ってくるようにしたい。でも、北側道路から入る車のために２台分の駐車場をとると建物が南側に寄ってしまう。その解決策がこの絵、縦列で建物下にある駐車場と、敷地南西の「空き」です。

お客さまによれば普段使いの車は１台で、もう１台の使用頻度は少ない。そして敷地条件としては、南西側は南東側に比べて空への抜けがある。それらをふまえて２階は「家族の間（LDK）」を北側に寄せ、水廻りが南側に飛び出し、南西の「空き」にバルコニーデッキがある間取り。

バルコニーデッキに面する幅2.6ｍの大きな掃出窓は南側敷地から５ｍ離れているので陽は入ります。北側は道路なのでこちらも明るく、南北に風が通る。むしろ隣家に面する南側が一番日照条件が悪いので、こちらに水廻り。そしてその間にEVと階段があります。

部屋配置を改めて書くと、１階はシューズクローク＋納戸、予備室的な和室とトイレ。２階は上記の通りLDKと水廻り、３階に子供部屋２室とご夫妻の寝室＋ウォークインクロゼットです。そして３階では南東の角にEVと階段が位置していることも、実はこの間取りのもうひとつのポイントです。

限られた面積に部屋が詰まっているので、吹抜けを設けたりする余裕はありません。でも、階段とは一種の吹抜けなんです。３階の南東角の窓には陽がよく当たりますから、その光が２階LDKの方へ落ちていく。階段を踏み板だけのスケスケのタイプにしておけば、この「吹抜け」は日照確保にかなり有効ですね。

もうひとつ、私の間取りでいつも意識している点、それは「キッチンが特等席」ということです。お客さまから特にご希望がなければ、対面型キッチンにすることが多い。家の中が見渡せて家族の気配を感じられる一番いい場所になれば、と思っています。

この家のキッチンは階段を上がってきたところにあるので、ご来客の時を想定してそこに引戸を設けています。でもきっと普段は開けっ放しでしょう。視界がひらけ皆と会話が弾むキッチンになっているかな。収納も人間の目線より下にたくさん設けられていますよ。「抜け」を邪魔しないためです。

そして２階のキッチンの場合はこれもポイント、わざわざ壁を引っ込めてまで設けたサービスバルコニーです。ゴミ出しの日まで一旦置いておく場所、というのが２階だとなかなか難しい。ちょっとした面積でいいのでこういう場所があれば便利ですね。

最後に２階北西角にある畳コーナー。畳の敷き方が変なのは、これが「小上がり」だからです。椅子の高さに畳座を設けてその段差分を収納に活用するというのはよく利用する手で、このお宅ではなおかつカウンターを設け、その部分は足が入れられる「掘り込み」になっているんですよ。

この家の敷地は30坪でまだ余裕がありますが、私の経験でいうと３階建では敷地面積の「狭さ」との戦いというか、如何にして床面積を確保するかに悪戦苦闘することもよくあります。私がつくった家で一番狭い敷地は14坪、でもこの家と全く同様に日照や通風を確保した開放的な家になっています。

そうした厳しい条件の敷地でこそ、より「間取り」のもつチカラが試される。そう言っていいのではないでしょうか。

※私のブログには他の間取り事例も多々ございます。やまぐち空間計画WEBサイトにて、是非ご覧くださいませ。