【建築設計事務所で家づくり】建築家の「素材選び」は何が違う？
設計事務所や建築家が設計した家や空間に入ると、「なんだか素敵だな」「心地いいな」と感じることがあります。その理由の一つは、建築家による徹底した「素材選び」にあります。
ハウスメーカーや住宅会社と違い建築家は、単にカタログからきれいな壁紙や床材を選んでいるわけではありません。デザインの美しさはもちろん、機能性、コスト、そして住む人のライフスタイルまでを見据え、緻密な計算のもとに素材を選定しています。
この記事では、一般の方にもわかりやすく、建築設計事務所や建築家が素材を選ぶ際の「視点」と、空間を魅力的に見せる「プロの工夫」について解説します。
建築家はここを見ている！素材選び「5つの視点」
建築家が素材を決定する際、脳内ではいくつもの要素を同時に検討しています。主にどのような視点で選んでいるのか、その思考プロセスを覗いてみましょう。
1. デザインと質感の調和
まずは視覚的な美しさと触覚的な質感です。 「モダン」「ナチュラル」「和風」といったスタイルの実現はもちろん、「光が当たった時にどう見えるか」「手で触れた時にどう感じるか」までをイメージします。空間全体のバランスを見ながら、主張しすぎず、かつ存在感のある最適な素材を選び出します。
2. 機能性と適材適所
どんなに美しくても、すぐに壊れたり汚れたりしては意味がありません。
耐久性： 外壁なら雨風に強いか、床なら傷がつきにくいか。
快適性： 断熱性や調湿性（湿気をコントロールする力）はあるか。
安全性： 滑りにくいか、燃えにくいか。 場所ごとに求められる機能を満たしているか、厳しくチェックします。
3. コストバランス（予算配分）
家づくりには予算の限界があります。建築家はコスト管理のプロでもあります。 すべての場所に高級な素材を使うのではなく、「家族が集まるリビングには無垢材を使い、寝室はコストを抑えたフローリングにする」といったように、予算内で最大の効果が出るようメリハリをつけます。
4. 住む人のライフスタイルへの配慮
「そこで誰が、どう暮らすか」が最も重要です。
小さなお子様がいる家庭なら、汚れに強く掃除しやすい素材を。
ペットがいるなら、足腰に優しく滑りにくい床材を。
自然派の施主なら、化学物質の少ない自然素材を。 住む人の生活に寄り添った選択をします。
5. 環境とサステナビリティ
近年では、環境への配慮も重要な基準です。 地元の木材を使う「地産地消」や、将来家を解体する際にゴミになりにくい素材、生産時のエネルギー消費が少ない素材など、地球環境に優しい選択肢も積極的に取り入れています。
空間が劇的に変わる！建築家ならではの「素材の工夫」
良い素材を選ぶだけではなく、その使い方にこそ建築家のセンス（職人技）が光ります。よく使われる手法をいくつかご紹介します。
■ 異素材をあえて組み合わせる
異なる性質の素材を隣り合わせることで、互いの良さを引き立てます。
例： 無機質でクールな「コンクリート」と、温かみのある「木材」を組み合わせる。
効果： 空間に緊張感と温もりが同居し、単調にならず洗練された印象になります。
■ 安価な素材を「主役」に格上げする
予算を抑えるための工夫も、デザインに変えてしまいます。
例： 本来は下地として使われる「ラワン合板」や「構造用合板」を、あえて仕上げ材として見せる。
効果： コストダウンを図りながら、カフェのようなラフでオシャレな雰囲気を演出できます。
■ 「経年変化」をデザインに組み込む
新品の時がピークではなく、時間が経つほどに魅力が増す素材を選びます。
例： 年月とともに飴色に変化する「無垢の床」、酸化して味わいが出る「真鍮（しんちゅう）のドアノブ」。
効果： 傷や色の変化を「劣化」ではなく、家族の歴史が刻まれた「味わい」として愛着を持てるようになります。
■ 光と影の陰影を操る
素材の表面にある凹凸やテクスチャーを利用します。
例： 塗り壁（漆喰や珪藻土）にコテ跡を残す、表面に凹凸のあるタイルを使う。
効果： 照明や自然光が当たった時に美しい陰影が生まれ、時間帯によって部屋の表情が変化します。
まとめ
建築家の素材選びは、単なる「色決め」ではありません。 **「デザイン」「機能」「コスト」「住む人への想い」**これら全てのバランスを整え、その空間に最適な一つの答えを導き出す作業です。
もしこれから家づくりやリノベーションを考えるなら、「どんな素材を使いたいか」だけでなく、「どんな時間を過ごしたいか」を建築家に伝えてみてください。プロの視点と工夫によって、あなたの理想を超える空間が生まれるはずです。
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