• 吹き抜け
• リビング階段
• トイレ２つ以上
• 対面キッチン

間取りの事例 006

やまぐち空間計画

間取りについてその考えを文章にしていく試み、第６回は一見ごく普通の感じのお宅です。１階に家族の間（LDK）があり、２階にそれぞれの個室があり、一般的には戸建住宅でこういう部屋構成が最も多いのではないでしょうか。

でも、ちょっと違うところが。そう、洗面所とお風呂が２階にあるということですね。今回はこの間取りを使って、１階と２階の使い分けということ、それと家事動線ということを書いてみようと思うんです。

玄関から順に歩いていくつもりで書きますと、まず玄関は引戸を引いて入ります。そしてお客さまはそのまま左に曲がってLDKへと進みますが、家族の日常動線としては奥のシューズクロークに入ってモノを置き、トイレと手洗場のところで用を済ませてからLDKへ。

そして、その手前に和室があります。この部屋がこの間取りのポイント、もし洗面とお風呂が１階にあるとしたら、この和室の場所でしょう。でもこの間取りではあえて和室。ここは客間でもあり、来客の宿泊スペースでもあります。

また、将来的には親御さんと同居されることもあり得るので、その際の居室としても想定されています。それもあって家族の居場所に近いところに設けているんですね。普段は角の引戸を引込んでおけば、LDKがより広くなります。

では、洗面所とお風呂が２階にあることでの不便はないか、家事動線が長くなる？という点はどうなのか。私自身は、それはご家族次第だと思います。そもそも、何をもって家事動線というのかも、住まい方によって色々ではないかと。

では、この間取りで「洗濯物の動線」を考えてみましょう。ご家族がお風呂に入る時に服を脱いで洗濯カゴに入れる。それを洗濯して干す。取り込んでたたみ、衣類の収納にしまう。そこまでの動きです。

このお宅の物干場は２階のバルコニーデッキです。そしてその手前にある共用スペース、そして吹抜まわりが「部屋干し」の場所になります。吹抜けは縦に空気が動き洗濯物がよく乾くので、私の家でもこの梅雨時期は階段廻りの手摺にいっぱい干していますよｗ。

そして外でも中でも干したものをたたむ場所も、共用スペースです。そして家族それぞれの個室に収納する。はい、洗濯物の動きはすべて２階で完結していますね。洗濯機はもちろん全自動でしょうから、出来た時に２階へ上がるその動線が長いだけです。

例えば、裏庭で洗濯物を干す、ということであればまた根本的に違ってきます。それは敷地によって、そしてご家族の考え方によって違うものですから、当然家ごとに「あるべき家事動線」のあり方も違ったものになるわけなんです。

以前にも書きましたが、普通の戸建住宅で「１階にないといけないもの」は、玄関などの「出入口」くらい、あとは極論すればどこでもいい。敷地条件やご家族のライフスタイルによって様々なバリエーションがあり得る。

間取りづくりとは即ち、それを探る作業だとも言えるでしょう。敷地にフィットし、暮らし方にフィットしているならば、「よくある形」からどれだけはずれていたとしても、それはその家族にとっての良い間取りなんです。

なんだかちょっと力説してしまいましたｗ。最後にもうワンポイント。キッチンの背面棚がちょっと出っ張っていますね。これはお手持の食器棚と、冷蔵庫やレンジ棚などの奥行を調整し、前面を揃えるためです。

この敷地は北側で外壁後退１ｍとなっているのですが、実はこういう決まりには色々と緩和規定があり、その緩和の範囲内で出っ張らせています。結果的に対面型キッチンが少し奥まる形になり、ダイニングテーブルの場所が広くなりますね。

「収納とは奥行である」というのが私の考えで、入れるモノに相応しい奥行寸法の収納をつくることを念頭に間取りを検討します。布団、衣類、あるいは無印良品の籐バスケットに合わせる、などなど、とにかく収納内部のスペースの無駄は避けたいところ。

先述の部屋の割り振りも非常に重要なポイントですが、時にこういった「出っ張り」をつくってまでもピッタリとうまく収納や家具類を誂える。それこそまさに注文住宅の醍醐味というものではありませんか。

※私のブログには他の間取り事例も多々ございます。やまぐち空間計画WEBサイトにて、是非ご覧くださいませ。