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間取りの事例 002

やまぐち空間計画

今までつくってきた間取りについて綴るこのカテゴリ、第２回です。昨日、前回の間取り投稿にご興味もってくださった建築士の方とzoomミーティングしましたが、家づくりの最初の分かれ道にして最も大切だと考えるこの「間取りの重要性」を力説してしまいましたｗ。

さて、今日の間取りは「土間のある家」です。今まで何軒も「土間」が大きな意味をもつ間取りをつくりましたが、一口に土間といってもその用途はいくつかあります。歴史的にみても、日本家屋での土間の役割は大きかったと言えるでしょう。

例えば前面道路から奥への下足動線である「通り土間」などは、京都の町家などに昔からあるかたちですね。また京都に限らず古民家では、玄関入るとたいてい広めの土間で、そこに竈（かまど）があって煮炊きする場所になっていたりもしました。

現代の土間は、もはや炊事の場所ではなくなってきていますが、例えば薪ストーブを土間に据えて、上がり框に腰掛け炎を愉しむ場所としてつくられたりもしますね。また、アウトドア系のご趣味を家の内部に持ち込むための場所、という意味合いのつくられ方も多いです。

私が最も多く経験したのは、自転車がご趣味の方のお宅。それ自体が美しい素敵な自転車をただ乗るだけでなく、土間部分の壁面に飾られたりするんです。そして土間は自転車を眺める場所でありメンテナンススペースにもなる、という感じ。

今日のこの間取りもその系統ではありますが、こちらはバイクです。ご主人が愛車と共に暮らせる家、ですね。玄関には人と別にバイク専用の出入口があり、よく見ると土間の一部にちょっとしたカウンターなどもあって、ここがご主人の愉しみの場所というわけです。

土間とLDKはそのままつながっているんですが、この間取りではその間に吹抜けの中を上がっていく階段があります。これによって土間とLDKがつながりながら区別される、なんとなく別のコーナーである、という距離感になることを想定しているんですよ。

土間と並んでこの間取りの特徴は、その敷地特性に由来します。敷地面積に余裕があるのでお庭が広くとれる。そして高台にあるので庭の先には眺望がひらけているんです。これらを家の中から色んな楽しみ方が出来ることを目論みました。

畳のリビング、ダイニング、そして浴室、この３つの場所がずれながら並んでいますね。こういうのを「雁行（がんこう）」と言いますが、私はこの雁行した間取りが好きです。理由は、こうすることで同じ庭が違う角度から楽しめるから、そして眺望も違うものが見えるから。

特にこのお風呂が楽しそうですね。他のどの部屋からも見えず、かつ南側の家からも覗かれない位置と向きにしてあるのでプライバシーも安心、そして浴槽につかって窓を開ければ庭とその先の眺望。お風呂の時間が長くなりそうですねｗ。

お風呂の隣は洗面所とトイレです。このような南側に水廻りをもってくることに抵抗のある方もおられるかもしれませんが、この水廻りが他の場所の邪魔をしていないことは間取りからわかると思います。小部屋である水廻りをずらすと、LDKは南北両側に面して風の抜けがとても良くなりますよ。

また、洗面所から出るとそこは広いお庭の一番端の物干しスペース。日当たり最高で洗濯物がよく乾きそう、そして上記３つの庭を愉しむ場所からはこの物干場が全く見えないというのもポイントですね。これも雁行間取りによる利点のひとつだと思います。

２階は北側に飛び出した小部屋が印象的ですが、将来的に子どものスペースは３つに仕切る想定で、とのご希望にこたえ、かつ北側道路からの外観のアクセントにもなるようにとあえて飛び出したもの。この部屋の下にある玄関ポーチの屋根と囲いともなることで、オープン外構であるこの家で玄関ドアへの「引き」も演出したつもり。

思うに、このように面積も充分にあり、日照・眺望にも恵まれた土地で、南側にLDK、北側に水廻りという通り一遍の間取りはもったいない。ちょっと変則的かもしれませんが、このような間取りを採用することで家の風通しがぐっとよくなるし、庭や眺望といった恵まれた点に、さらに変化をつけることが出来ると思うんです。

「家にいて味わう、色んな楽しみ方」というものこそ、暮らしの豊かさに他なりません。そういうポイントをあちこちに盛り込む、そのこと自体を面白がりながら間取りをつくれば、きっと楽しい家になること間違いなし、ですよね。

※私のブログには他の間取り事例も多々ございます。やまぐち空間計画WEBサイトにて、是非ご覧くださいませ。